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自作小説「水の車輪」の原稿置き場です。 ※未熟ではありますが著作権を放棄しておりません。著作権に関わる行為は固くお断り致します。どうぞよろしくお願い致します。
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三、

かつてこの国の空には、決してその位置を変えない二つの星があった。
人々は、赤く輝く一つを、ルフェラ、橙の光を放つ一つを、サフィアと讃えていた。
神話がある。
彼ら神々はかつてこの大地に住まい、緑を、青を、生き物を、人を、作りたもうた。
やがて彼らは人の勤勉さに感じ入り、住み慣れた大地を人の住む家として与えたもうた。
彼らは全て黒き空へと渡り、人々を見守っている。
彼らが空へと住まったがために、空には星というものが現われた。
それは夜空を彩り、闇に脅える命を導いた。
人々は、この光る星は全て、神そのものの姿だと知った。
神は時折、寵愛なさった生き物をも、傍に召される。
彼らもまた、星となる。
星となることは、人々の誇りであった。尊く生きれば、星になれる【かもしれない】。
星にまつわる神話が数多く生まれた。
時に、空から星が消えてしまうこともあった。
人々は理解した。星となった賢者、神々が、この地に再び降臨なさるのだと。
数々の英雄の伝説が生まれた。
空と大地をつなぐその物語こそ、人々を魅了してやまない。
大地が生まれ幾千の時を経てなお、人々が流行り病や度重なる戦、覆せぬ貧富の差に耐え生きることができるのは、神々のための物語が、今も人々の心に根付いているからだった。
ルフェラとサフィアは、かつての戦乱、混沌の三千年を終結させた双子の英雄である。
世界は二人によってようやく統一され、戦は終わりを告げた。
以後、小さな紛争は各地で起こるも、【暗黒戦争】のような戦乱は二度と起こってはいない。
彼らは非常に美しい存在であったとも伝えられている。
神に愛された二人は、世界を平定してのち、その行く末を見守ることなきままに、天に召され、二つの星となった。
ルフェラと同じ髪の色の星、サフィアと同じ髪の色の星。
彼らの死とともに空に現れ、以来不動のままそこに在り続ける双つ星こそ、英雄神そのものであるのだと、人々は知った。
旅をする者、海に出るもの、彼らは凡て、【ルフェラ】と【サフィア】を目印に歩む。
双子神は人々を見守り続けている。
その双つ星が空から消えて、まだ十数年にも満たなかった。
人々は、まさにかつての英雄が再び降臨されるのだと知った。
折しも、絶対神クルトェラを奉る中央教会の下位修道女が、第三等神ダジエルダからの詔を賜る事態が起こる。
神は言われた。

『其の赤子
生まれ落つ時しより
彼の者である

此れ須らく
空に還るべき末なり』




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